生命保険のDX

※サムネイルの写真と本文は、全く関係ありません。

とある最大手の生命保険会社さんとのお噺。

本社のDX推進担当の役員が、ドヤ顔でデジタル化のお話をされたのだが、どう聞いても15年以上前から巷間で進む保険のリーズ販売手法をちょっとかっこよくした程度のものにしか聞こえない。まあ、保険会社自体が行うわけだから価値はあるのかもれないのだが、当時リーズ販売界隈で課題となったことを色々と聞いてみたら、全く何も考えていない。

実は、已己巳己、保険のリーズ販売を行うポータルメディアを運営する会社の役員をやっていた時があり、保険販売の資格も一通り取得して、手売りもしてみた経験がある。

聞けば、その本社DX部門、責任者の役員から組織にいる社員のほとんどが中途採用で保険を売るような活動をしたことが無いという。

様々に課題は感じるが、1つ1つの課題感は已己巳己の経験や視点からくるものであるだろうから置いておいても、1つだけ絶対に間違ってる点がある。

その保険会社さんは数万人規模のセールスレディがいるのだ。そのセールスレディが日々の営業活動を通じて成立している保険会社であるはずなのに、本社がDXしてセールスレディにリーズを渡すというのだ。勘違いも甚だしい。ライフネット生命ができて10年以上経つところで、本社が本社だけでリーズを掘り起こすというのは、悪手でしかない。現場で、その保険会社のブランディングの最前線にいるセールスレディをただ単に営業活動の人足としか見ていない時点で、DX推進の責任者失格である。

セールスレディが、地場で活躍できるための素材を本社側はDXを通じて用意する裏方的存在であるべきだ。

これは道義的な視点による噺ではない。マーケティング的的にも悪手なのだ。15年前のリーズ販売祭(保険の見直し面談が1件行われるとリーズとして3万円~5万円くらいが支払われる時代があり、面談予約を取るために様々なエサをぶら下げるキャンペーンが乱立し金融庁からの規制が強化された)の時も一番課題となったのは、リーズの提供側と受領側の意識にGAPがあって、ほとんど成約につながらないことが多かったのだ。

生命保険会社の本社が、デジタルブックをつくり芸能人の記事やイベントを行い、そこからリーズを作るという。芸能人やイベントに興味があり応募してきた人を、地方のセールスレディに紹介する(これがリーズ)。このリーズから、生命保険を見直したり新たに契約する?一体どうやって?となるに違いないのだ。

その件をそのまま話したところ、担当役員に嫌われて出禁となったが、その場にいた女性役員から後日連絡があった。彼女は、セールスレディから叩き上げで役員まで上り詰めた方。「已己巳己さんのご指摘、まさに私がなんとなく不安視していたことを具体化してくれた」と高い評価をいただいた。まあ、デジタル推進の実装手前であったのでそこで話は止まってしまったのだが、5年程度経った今、その会社の売上がDXで爆上がりしたというニュースは聞いていない。

デジタルやITのスキルや能力より、「視座」が重要であると感じるのは、このような事例に枚挙に暇がないからだ。

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