歯科向けのDX

※サムネイルの写真と本文は、全く関係ありません。

神戸で、歯科向けのデジタル・サービスを提供している社長さんと出会った時の噺。

このエリアでは、結構なクライアントがいますが、他地域への展開を図ろうとすると、医師会などの御作法も分からず困っているという。

病院に絡むDXは、とにかく診療報酬点数次第というところがあり、点数がつかないものに医者はほとんど(全員とは言わないが傾向として)協力しない。協力できない、という側面も、特に地方の病院は経営も厳しくあったりする。

歯科であれば、自由診療となる領域も多いので、そちらから攻めることも考えられるが、聞けば案の定、そっち方面はマーケティング全振りのレッドオーシャンなので厳しいという。審美歯科的なアプローチも、資本がなければ難しい。

つまり、両側面のどちらを選択しても、攻めるのが難しいのだと言う。

なら、別の3点めを探すまでだ。というのが、已己巳己的な視座である。

歯医者→口→菌→海外で盛んになりつつあり日本でも始まった便バンク。という思考から、「口内細菌バンク」というのを始めたらどうだろうか。というアイデアを出してみた。

便の収集は大変だが、歯科にいけば、唾液は機械に吸われて捨てるだけの医療廃棄物でしかない。それを個人のカルテと紐づけてデータを追う。口内細菌も変化が激しいらしいから、定期的な歯科検診を訴求する1つの売りにもなる。便バンクと同等で、唾液とデータを提供することで患者にも協力費を支払える。

日本は、コホート研究が世界で最も盛んであり、認知症や糖尿病などの患者群に対する研究が進んでいるが、特定疾患を定めない平場の研究(健康な人も含めて定常的にデータを集め変化を見る)となると、福岡県の久山町研究くらいしかなく、小さい町ではあるが50年以上のデータ蓄積があり世界でも有名なコホートだったりする。口内細菌コホートを作ってしまうのだ。

神戸は、医療産業都市もあり、この手の研究系は盛んなエリアでもある。歯科で採取するデータではあるが、常在菌が疾患にあたえる影響はがんを始めとし盛んに行われているので、データを見たい製薬企業は歯科だけにとどまるものではない。メディカルアフェアーズなどの領域も含めれば、相当なニーズがあるし、協力費などを負担する企業も多いだろう。

コロナチェックも唾液を使うタイプがあるが、唾液はウイルスの発見にもつながるので、自治体からしてもパンデミックの予兆モデルを作りやすい。下水から予兆モデルを作ろうとしている自治体もあるが、重厚長大なしくみに金がかかりすぎる。よほど、口内細菌コホートに予算を入れたほうが効率的だ。

これなら、第3のアプローチであるから、医師会からも文句は出ないだろう(新たなマネタイズとなれば好意的では)し、審美歯科を狙う一般企業とも歯科や歯科に来る患者から金を取るビジネスモデルではないので文句は無いはずだ。

名刺交換レベルのちょっとした雑談で、結構良い筋のアイデアが出た。

「歯科」というコンテキストを「歯」から離れ「唾液」とする。こういったコンテキストの再定義があって、それを実現するためのDXがある。毎回思うが、これが真のDXアプローチである。

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