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已己巳己をワーキングネームとする案は10年以上前からあった。
表音文字や表意文字などが持つ文字の役割を、実にアイロニカルかつユニークな視座から、ただ単に「形が似ている」という意味を「形が似ている漢字」で表現したあたりに、相似性や中心性を捉えるデータアプローチが好みな自分にはとても適しているというのは、サイトのトップにも書いた話であるが、実はそれだけの理由でもない。
名刺交換でもらう名刺は、どんなベンチャーでも横文字ばかりで検索しないと何もわからないし、記憶にも残りづらい。まず、読めない。気になる。メアドはikomikiにしてあるので、そこで気づく人は気づく。
しかも、数字の「1539」で表すこともできるから、検索するときもわかりやすい。競合サイトを見たが大したブランドサイトも無いのでしばらく置いておけば上位表示も狙える(積極的な営業活動はしてませんのでデジマ施策は何もしてませんので、つくりの甘さとか突っ込まないで下さい)。
ただ、それも言い訳だったりして、漢字にした一番の理由は「中村活字」にある。
日本有数のラグジュアリータウンである銀座のなかでも、歌舞伎座の裏に広がる昔からの職人街にひっそり佇む印刷屋、中村活字。
創業1910年、未だにたくさんの活版が店内を埋め尽くす老舗中の老舗印刷屋さん。活版印刷と言っても、殆どの場合はデジタル化が進むが、未だに活字を組版して名刺を作ってくれるのは、都内でここ一店舗だけなのだ。
「中村活字の名刺が綺麗に映える名刺をつくりたい」というのが、実際のところ一番の原動力。
かれこれ7年以上ぶりになる新しい名刺を受け取りにいくと、話し好きの中村さんがたくさんのことを教えてくれる。
「印刷が好きなら、近くに店を構えていて最近亡くなった装丁の神、菊地信義さんの映画を見てみてほしい。」
「映画アメリカンサイコに出てくる活版名刺を見て、アメリカから名刺発注があった。」
「元朝日新聞の印刷所があった場所にハイアットセントリックというホテルができて、そこの展示が活版でできてるから見に行ってみてほしい。」
「カンテレの銀座黒猫物語というドラマで、中村活字の回があり、中国で人気の役者が出たら中国からたくさんの人が来た。」
「Forbesの英字新聞やフランスのメディアに取り上げられ、ロスの山火事で消失したエリアにあったグーテンベルクで活版印刷をしていた女性が復活をかけて会いに来た。」
インクの匂いとたくさんの書体に囲まれた店内で、屈託の無い笑顔の中村さんが、次から次に資料を出してはいろんなお話を聞かせてくれる。観客は、私一人。最高の贅沢である。
「単なるデジタル化」ではなく「デジタルでトランスフォームする」役割を担うには、トランスフォームすべきものとすべきでないもの、その目利きがとても重要だと常日頃肝に銘じている。
絶対に、デジタルでは敵わない魅力が、ここにある。