※サムネイルの写真と本文は、全く関係ありません。
このサイトは、已己巳己と過去に名刺交換させていただいた方々に、ひっそりと情報やアイデアを共有することを目的に運用しているのだが、質問を頂く際も公開できるものはしておこうと思う。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9341/tdnet/2697582/00.pdf
「医療系情報サイトの運営企業がAIに負けて減収減益となっているようです。AI時代に入ると、WEBサイトという資産も無駄になるのでしょうか。今後どのような方向に向かうのでしょうか。」
医療系情報サイトと聞くと、已己巳己も医療系メディアに携わっていた頃の「WELQ」を思い出す。医療系のキュレーションサイトとしてSEO対策を重点的に行った結果、とんでもない医療情報が大量に投稿されていて大問題となった。実は、あの問題が出た直後、已己巳己の元に「WELQ」の担当がやってきた、サイトの身売りをしたい、記事も大量にある、買ってくれないかという。「ロゴだけ300万で買う」と言ったらそれはできないと言われてそれっきりだったが、あれからはや10年近くが経つようだ。
医療系に限定せずとも、今後SEOは厳しくAIへの最適化AIOが重要であるという話を耳にする。そもそも個人や中小企業のメディアレベルで生き残れるのかという相談は、未だに多いので、AI時代のWEBメディアについて少し私見を残しておこうと思う。
どこから語ればよいかが難しいのだが、まず、そもそもWEBサイトの多くが、上述した「WELQ」あたり、つまり10年くらい前からオワコン化していたので、すでに終わって久しいという認識が重要である。10年前あたりからキュレーション化や高度なコピーコンテンツ化などが進み、ほとんどのサイトに新情報と言えるものがなく、Googleも「EAT」などと対策を試みたものの、そもそもこの世にある情報配信者のレベルがレベルであるため、大した効果もなく、検索したいキーワードで知りたい情報にバチッと出会えることなど、あれから10年経った今でもめったにないわけで、テキスト検索自体の限界に来ていると言える。
ただ、これは書くとややこしくなるのだが、Google等のクエリ検索系エンジンは「絶対評価ではなく相対評価」でサイトの掲載順位を決めている。「生命保険 種類」と調べるか「生命保険 口コミ」と調べるかでは、求められる内容が違うためアルゴリズムの重み付けそのものも全く別のものとなる。「生命保険 種類」となると、各社生命保険会社など属性ドメインにおける静的で網羅性のあるサイトが強い。しかし「生命保険 口コミ」となると、口コミなど動的で画像などを含んだたくさんのコメントがあったりソート機能などがしっかりしているサイトのほうが強い。「生命保険といえばこのサイト」というなんでもかんでも強いサイトなどそもそも存在していないのだ。
もう1つ、前提を話しておくと、Googleはすでに5年以上前からAmazonに広告出稿費で負け始めている。インスタやTikTokを使っていない層であっても、Google検索の結果を「画像」で見たり、そもそもYoutubeなどで「動画」を探したことが増えていないだろうか。検索した結果のアウトプットのあり方が1位からリスト表示されるGoogleは、検索結果の表示の仕方でもすでに負けてきていた。
なぜ、こんなにもGoogle検索が弱まったか。それは「スマホで閲覧(コロナ前から)」し「スマホで発信(コロナあたりから)」することが一通り当たり前になったからだと、已己巳己は考えている。縦型で狭い表示領域にGoogleのUIは適さないのだ。
逆を言えば、PCでの作業が多いホワイトカラーや、中高年以上のユーザーをターゲットにしたようなサイトであれば、まだまだGoogleだけでも勝負できるだろうし、このあたりもサイトとクエリの種類によって適す適さないがあることは抑えておいたほうが良い。
で、だ。「これらがAIに取って代わるか、中小規模サイトは生き残れるか」という質問なのだが、まず「AI」は「Google」と並べられる要素ではない。Google検索にもAI検索は付いてきている。正しく書くなら「Google→Amazon→Youtube/TikTok/Instagram」と変遷を遂げる次の情報プラットフォームはどこが覇権を抑えるか?」だと思うのだ。そして、その答えに已己巳己が答えるとすると「Googleのような世界的覇権となるようなメガプラットフォーマーは出てこない」。めちゃくちゃに、細分化される時代となるのではないだろうか。
ブラウザという形式を取らなくとも、AI経由でWEBサイトから横断的に集めたクエリを素人でも簡単に収集し公開できる時代が来ている。そのため「ゲームをしていて気になることがあった→ブラウザへ移動→ブラウザで検索→テキストや動画などで結果を閲覧」という、この「ブラウザへ移動」という必要がなくなるのだ。そこらの弱小ゲームアプリであっても、好きな音楽をかけ、今日のレシピを考えさせ、このあとの天気もわかる、そんな時代の到来である。
WEB空間という本質は、とにかく集中的な権威性と相性が悪いのだ。
では、そんな時代になるとして、サイト制作者はどうあるべきかと問われれば「しっかりとした自前のコンテンツを生み続け、NFT化(音楽と同じように権利化する)して展開する」つまり、コンテンツプロバイダであるべきだと断言する。かくいう已己巳己のサイトはNFT化していないが、それは、已己巳己のアイデアやコンテンツ、視座をフリーで活用してもらったほうがブランディングになると考えているからだ。
この前、元WIRED編集長の若林恵さんとお話してたのだが、彼も生成AIの台頭ということに相当懐疑的で、その一番の理由は「そもそものデータソースの質」に疑いを持っていた。そのとおりである。
Google時代のようにGoogleに搾取されるために必死こいてSEO対策などをやっていた時代と比べ、対策もいらない、量も要らない、質も要らない、徹底的に「独自」なコンテンツにこだわる。そうすれば、そのコンテンツをチョイスしてくれる先は星の数ほどある、そういう時代になる。ただチョイスされる先は星の数ほどあるので、チョイスされたからマネタイズできるかどうかと言われれば難しいだろうが、例えばウェザーニュースやレスキューナウのように唯一無二の情報ソース源を持っているところはとても、強くなるはずだ。
この流れ、実は音楽シーンですでに起きている。今までは数社のメジャーレーベルがテレビドラマのテーマ局枠などを独占していて、売れようと思えばメジャーレーベル一択だった。それが、様々なミュージックアプリでの視聴数売上や、動画などの閲覧数売上などでやっていける時代になった。それと同じことだ。
「じゃあ独自のコンテンツってどう作ればいいですか」と完全に思考停止した質問が出てきそうだが、それは個人か法人かにもよるし、駅前だけが商圏のビジネスにおけるコンテンツもあれば、日本全国で勝負したい時のコンテンツもあり千差万別なので、答えようが無い。
1つ、考え方のコツだけ書いておくと「オブジェクトではなくメタ要素を見つめる」ことだ。これは常に口にしているが、オブジェクトそのものしか見てないことが多すぎる。飲食で例えてみると「寿司」「焼肉」「ピザ」「中華」などオブジェクトそのものにあたるものではなく「安い」「静か」「駐車場あり」などのメタ要素をコンテンツとすれば、飲食だけでなく様々なオブジェクトを探索している層に向けて役立つコンテツとなったりする。
まとめると、Googleなどの権威となるプラットフォーマーに擦り寄り発信する内容を鑑みていた時代が5年10年前くらいから終わりを告げ始め、ここ最近の生成AIによって「自由に発信していれば、需要あるところに勝手に届く」時代になるのである。
姑息なことをしなくても、良い(適した)ものが広まる時代になる。何も恐れることなど無い。