雨黒

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Xで、アメックスのブラックカードに関するつぶやきが話題になっている。

とあるユーザーが「カードのステイタスが信頼を生む」といった内容を呟いたところ、著名な経営者や資産家が「自分は楽天カードだ」「私は自社の平カードだ」「ウォーレン・バフェットはアメックスの平カードだ」と、つまりクレカごときでマウント取ってるなんでダサい、という風潮のリツイート祭になった。

これは、已己巳己が45歳で転職した一つのきっかけにも重なる話だなと感じる。

45歳を迎え、子供も2人すくすくと成長する中、考える時間が増えたのは、引退した65〜70歳以降の生き方だった。

老後は、落語家になりたい。桂歌丸の最後の高座を国立演芸場に見に行った。鼻に酸素チューブをつけ両腕を弟子に支えられた姿は、痛々しい病人のそれにしか見えなかった。しかし、高座に上がった瞬間、背筋を伸ばし、その体のどこから出ているのか想像もつかないほどしっかりとした声で、噺始める。演目は、小間物屋政談。歌丸が尊敬する圓生の十八番である。小間物とは当時の化粧品や美容に関するものを売る仕事で色男が多かった。背負子を担いで大阪と東京の道すがらで商いする貧乏ながらに色男の小四郎、噺に登場する元妻と、ひょんな経緯で結ばれる新しい妻。元妻と離縁させ別の男と縁組させる大家と、裁定する大岡越前守。道場人物ごとに異なる声色や仕草は、鼻からチューブをぶら下げている老人のものとは思えないほど生き生きと眼の前に情景を創り上げていく。外野は「歌丸は古典落語のために命をかけて高座に上がり続けた」というが、それは違う。純粋に、楽しいのだ。寿命も見え、身体が不自由となってもなお、国立演芸場に「歌丸の噺」を聞きたいと思い集まるファンがこれだけいる。こんな楽しく、幸せなことは無い。高座を終えた歌丸の表情を見れば、誰もがそう思う。

已己巳己も、そんな死に方をしたいと願いはすれど、いかんせん、ここから落語を極めるには時間が足りない。落語は無理でも、何も知らず何も持たない已己巳己が、ビジネスの世界でここまでこれた。来るまでにもたくさんの経験をしてきた。それを、自慢話ではなく、お返しとして若い人たちに、已己巳己の噺を通じてやる気になってもらいたい。已己巳己の噺を聞きたい!と思っていただけるようなエピソードをたくさん、社会人のうちに、経験しておく。そんな生き方をしようと決めた。

80歳、已己巳己が登壇する。若者が数百人座っている。そこで、已己巳己はなんと自己紹介するのだろう。「年商100億の経営をしていました」「年収5億円ありました」なんか違う。違うというか、これを伝えて集まる若者に興味が無い。ただ、アメックス自慢の件につながるが、ここからどれだけ已己巳己が大きな事業を立ち上げたとしても、それが金に換算するしか伝わらないものであったら、自分の存在価値を貨幣換算するしかなくなるのは自明の理である。

そうならないようにしたければ「大きな事業」というコンテキストは、今までにないもので、世界を変えるようなものである必要がある。ただ、そういった事業は積み上げて見つかるものでもなく、なにかのきっかけで天から降ってくるような使命や宿命とも言えるようなものが無ければそうそう形にできないし、今のところそこまでのものは已己巳己の中に無い。

「親が破産して新聞配達から始まった社会人生活」「なんのスキルが無くても、イベント運営、雑誌編集、SEO、AI、医療、コンサル、データ活用、民間大手企業、自治体、政府、どんな相手や内容が立ちはだかろうが、はいできます、と言えばなんとかなるし、死ぬ気でやり切ってしまえばしっかり評価される」「肥満児で最低レベルの扱いを受けてきても、無事綺麗な妻とかわいい子どもたちに恵まれた」自分の脳内だけで無理と決めつけてしまい、可能性に蓋をしている若者に、不可能なんて無いんだよということを伝えたい。已己巳己でもできるんだから、俺でもできるかもと思ってもらいたい、その程度の噺で十分なのだ。

そう考えている時に、高校生の就活支援をする株式会社ジンジブと出会った。まさに、奇跡の出会いである。引退してからやろうと考えていたことを、今からできる。もちろん、已己巳己の経験だけでは噺のネタは限られるが、ジンジブで残りの社会人人生、様々な業種業態に携わる方々の仕事にまつわる噺もまた、已己巳己の噺にできる。圓生、志ん生、圓楽、志の輔、歌丸と落語のように、紡いでいく。

滑稽噺、人情噺、芝居噺に怪談話を大別される落語ではあるが、人生噺というのか生き様噺というのか、そういう分野を作り上げられたら、クレジットカードや金目のものが無くとも、歌丸のように人生の終盤まで楽しく、生き生きと過ごせるんでないかなと、本気で考えている。

「稼ぐしごと」から「成すしごと」をしたいと、転職を決めた。

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